なぜ書くのか。それは、人に言葉があり、私に心があるから。
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京極味アイス
2008-11-10 Mon 06:15
「おい神埜」
美緒はゴーグル越しに歩未を睨みつけた。
「何故あたしがあいつらを上に逃がしたか解るか」
歩未は不思議そうな顔で美緒の眼を見つめた。
「あのピストル馬鹿は下の階に行くからだ。何故下に行くか解るか」
「おい、都築―――」
「お前を上にやるためだ。行け神埜ッ」
美緒は歩未を階段の上に強く押した。
「都築―――」
「お前に心配されるほど馬鹿じゃねーよ。あたしは天才だ」
「馬鹿だよ」
歩未はそう言って階段を駆け上がった。
(731ページより)

アイスクリームは甘いものだと誰もが思う。しかし目の前のアイスクリームはしょっぱいかも知れない。最初はそのしょっぱさに驚くが、やがて塩味のアイスクリームも意外にイケると気付く。

『ルー=ガルー 忌避すべき狼』は、近未来の管理社会での少女たちの冒険を描いた小説だ。これを書いたのが「京極堂」や「巷説百物語」シリーズのあの京極夏彦だというのだから驚く。(そしてそれを知った後で、新書で753ページという本の厚さに納得する。)

この本は王道的なライトノベルであり、若い主人公たちによる若い読者のための物語だ。物語の王道とは、ずばり「友情・努力・勝利」である。(当然それは決して少年ジャンプだけのものではない。)この本で、14歳の少女たちは顔を合わせて話す事さえ少なくなった世界で関わり合うようになって「友情」を築き、子供という無力な立場を超えて事態に立ち向かおうと「努力」し、管理社会の頂点に立つ巨悪に「勝利」すべく戦う。その物語の面白さと痛快ぶりに拍手喝采を送ると共に、京極夏彦の引き出しの多さに改めて感心する。

もちろん探せばあちこちに京極印はあって、読者の腕を鍛える本の重たさや、他シリーズよりは平易だがまだ多めの漢字や、京極節炸裂の長い台詞による語りや、人間と世界の関わり方についてのうんちくや、主人公格の登場人物に重い罪を犯させることや、犯人の動機のグロテスクさなどなど。

このしょっぱいアイスクリームをおいしく食べた読者もいるし、やっぱりいつもの味の方がいいと思った読者もいるが、私はかなり好きだった。そして早く次のを食べたい。(続編予定!)京極夏彦の新しいものへと挑戦し続ける意欲は、クリエイターが大いに持つべき資質だと思う。

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