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唯ぼんやりとした不安
2010-07-15 Thu 08:54

松本清張著 『昭和史発掘1』収録、「芥川龍之介の死」について。

「…自殺者は大抵レニエの描いたやうに何の為に自殺するかを知らないであらう。それは我々の行為するやうに複雑な動機を含んでゐる。が、少くとも僕の場合は唯ぼんやりした不安である。何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安である。」(「或旧友へ送る手記」という遺書より)

芥川龍之介。作家。昭和二年七月二十四日未明、田端の自宅で致死量の睡眠薬を呑み自殺。


松本清張は同時期に文壇に登場した芥川龍之介と谷崎潤一郎とを比べて、「文壇にデビューした華やかさは両者に甲乙はないが、質的にこうも違う。芥川ほど文壇の出発にあたってその環境に恵まれた男はいなかった」と述べる。芥川は夏目漱石の推挙で『鼻』や『芋粥』を発表して、たちまち文壇の寵児になった。また、漱石門下の徒党による集団的な支持もあった。そこが、一匹狼的に登場し、馬車馬的な強靭さを持つ谷崎とは決定的に違ったと松本は書いている。「芥川は最初から文壇的環境にめぐまれ、それだけに環境の変化に影響されやすい弱さを持っていた。それが芥川の不幸であった。」

谷崎は芥川の死を聞いて、「正直に云ふが君の自殺にはいろいろ分らない事が多い。ここ一、二年を無事に通過してしまへば、それから先は伸び伸びと生きられたやうに思へてならない」と不思議がっている。松本は断言する。「谷崎ならば金輪際、自殺などしない。絶えず周囲がチヤホヤして自分を受け入れてくれなければ淋しくてならないのが芥川の性格だった。それは多分に文壇出発時のめぐまれすぎた環境に影響された弱さからきていると思う。一、二年間を乗り切ることも芥川にはできなかった。」

不幸の中に幸福への布石があるように、幸福が不幸への布石となることもある。
明けない夜はないが、暮れない日もまたない。



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