なぜ書くのか。それは、人に言葉があり、私に心があるから。
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨
The Last Dive
2011-01-06 Thu 00:01
9780060932596-lc.jpg

“The Last Dive” Bernie Chowdhury著
(邦題『沈黙の海へ還る』 光文社文庫)

実在したダイバー、クリス・ラウス父子の並はずれたダイビングへの情熱と数々の冒険、そしてさらなる高みを目指して水深70メートルに沈む謎のUボートへ潜降し、減圧症によって命を落とした悲劇を描くノンフィクション。著者自身が減圧症の経験を持つダイバーで、父子とも親しかった。淡々とした語り口なのに余韻が深く、本書の描く情景を思い浮かべると涙が出そうになる。

海のないネバダ州にありながら、私は体育の授業の選択項目にあったのでダイビングのクラスを取り、レイクタホの冷たい水に凍えながらCライセンスを取った。しかしそれからは機会がなくて一度もダイビングをやっておらず、(普通ダイビングするであろう)暖かくて魚のいっぱいいる南の海には一度も潜ったことがないままだ。本書で果敢なダイバーたちが挑むのはまさに「ダイビングのエベレスト登山」で、入り組んだ海中洞窟、障害物だらけの沈没船、そしてダイビング協会が水深40mまでと規定したのをはるかに超える水深90mに及ぶ大深度ダイビングと、そのまさに命をかけた冒険には目を見張るばかりだ。

大深度ダイビングは、水深10mかそこらで熱帯魚を見るのとはわけが違う。深く潜るほど水は冷たいし、光は届かない。呼吸によって取り込んだ窒素から「窒素酔い」を起こして正常な判断力を失うし、かといってタンクの中の酸素濃度を高めると酸素中毒によって激しいけいれんを起こす。減圧症(ベンズ)とは、水圧の高い深海で吸った空気中の窒素分子が血液中に溶け込み、浮上して水圧が減ったことでそれが元の体積を取り戻し、窒素の気泡が体中の血管を詰まらせるというものだ。それを防ぐためには、例えば深い水深に30分間潜った後に浅い水深で.3時間ただ待って(減圧停止)身体から窒素を出すしかない。

著者もラウス父子も、減圧症にかかった経緯は同じだった。大深度の沈船(Deep-water Wreck)へ潜り、窒素酔いによって何らかのトラブルが起きて体力と空気を消耗し、さらには海底に置いた減圧停止用の空気タンクを見つけられなくなり、減圧停止を行わないまま水面へ浮上するしかなくなった。海中にいて空気が尽きれば溺死するしかないが、減圧症はすぐに高圧室治療を受けられればまだ生き残る可能性があるからだ。著者はそれによって生き延びたが、ラウス父子は父クリスが浮上後の海面で、息子クリシーが高圧室の中で命を落とした。司法解剖でクリシーの心臓を水中で開くと、血液ではなく気泡の塊が出てきたという。その気泡が液体に満たされていないとポンプの機能を果たさない彼の心臓を止めた。そして、それが彼らのラスト・ダイブとなったのである。





スポンサーサイト
別窓 | 趣味に走るが | コメント:0 | トラックバック:0 | ∧top | under∨
<<言い換え | 紅炉一点雪 | 年始め>>
コメント
∧top | under∨
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
∧top | under∨
| 紅炉一点雪 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。